『死ぬほど読書』

丹羽宇一郎・著 幻冬舎

伊藤忠商事名誉理事、早稲田大学特命教授

誰が発信しているのかは、とても重要なことです。たとえば、「中

国筋によれば〜」といういい方だけでは信頼性に欠けます。中国政

府の誰がしゃべったのか、33の行政区のうちどこの区が発したのか、

といったことが問われる

大新聞社が行った世論調査にしても、調査のやり方からきちんと見

ていくと、世論を正しく反映しているのか定かではないことが多々

あります。たとえば中国人の大半は日本が嫌いだという調査結果が

あっても、では何人にそれを聞いたのか? 質問の仕方はどうだっ

たのか? ということが大事です

戦中は、軍部の情報局の指導で日本文学報国会なるものが結成され、

多くの作家たちが名を連ねました。彼らはペンの力で戦争を賛美す

るよう求められたのです。林芙美子尾崎士郎のように従軍作家と

なって中国大陸のリポートをしたものもいます。中国はいいところ

だ、ハエ一匹飛んでいない、きれいで素晴らしいところだと礼賛一

辺倒の極端な記事が出まわりました

大豆を扱っていた私は穀物相場の読みを外し、500万ドル近くの損

失を出したことがありました。これは当時の日本円に換算して約15

億円。当時の会社の税引き後利益に匹敵するものでした。大失敗の

原因は、ニューヨーク・タイムズの一面に大きく載った「今年は深

刻な干ばつになる」という予測記事を鵜呑みにしたことです

私が考える教養の条件は、「自分が知らないということを知ってい

る」ことと、「相手の立場に立ってものごとが考えられる」ことの

2つです

伊藤忠兵衛は、「商売は菩薩の業、商売道の尊さは、売り買い何れ

をも益し、世の不足をうめ、御仏の心にかなうもの」と述べています

想像力は現実を生きていく上で、とても大事なものです。本を読ん

でさまざまな生き方や思考を体験できれば、想像力はどこまでも伸

び、世界はそれだけ広がります

「習う」より「慣れろ」では、「慣れる」に重点がいきすぎて「習

う」機会が少なくなってしまう。やはり「習う」ことにもちゃんと

目配りをしたほうが、習得のスピードは上がるのではないか

三国時代の英傑、劉備が臨終前に息子に語った「悪、小なるを以て

之を為すなかれ 善、小なるを以て之を為さざるなかれ」という言

葉は、私が仕事をする上での大きな指針となっています。

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